バイオエピステモロジー
という学問

 いまの生命科学は、機械論(もしくは分子機械論)の上にある、と信じられている。実際、多くの教科書には、「昔から“機械論 vs 生気論”という対立があり、科学が発達するにつれて生気論が否定され、機械論が勝利を収めるようになった」と書かれている。
 これに対してバイオエピステモロジーは、“機械論 vs 生気論”という二項対立そのものを疑問視する。なぜなら、いまの物理・化学が生命に対してとってきている姿勢には、小さくはない欠陥が含まれており、物理・化学によるこれまでの説明は、細胞内の自然の振る舞いを直接には語ってはいないのではないか、という疑義があるからである。

 科学は永久法廷の場である。
 だが、過去一世紀の生命科学の歴史を調べると、科学的説明の根拠に関して厳格な吟味が行われてきたとは、とても言えない。この事実を踏まえバイオエピステモロジーは、生命に関する認識論をその基本から組みたて直そうとする学問的立場である。それは、これまでの自然観が巨大な哲学的課題を隠しもっていたことを察知し、この課題に立ち向かう決意をすることである。またそれは、二十世紀の知的精神史を総括しようとすることでもある。

プロフィール

 米本昌平:1946年生まれ。京都大学理学部卒業後、証券会社で働きながら科学史を独学。1976年に三菱化成生命科学研究所(後に三菱化学生命科学研究所)に入所、社会生命科学研究室に所属。現在は、生命論に没頭。著書は、『バイオエシックス』(講談社新書)、『先端医療革命』(中公新書)、『遺伝管理社会』(弘文堂)、『地球環境問題とは何か』(岩波新書)、『独学の時代』(NTT出版)、『優生学と現代社会』(共著、講談社新書)、『バイオポリティックス』(中公新書)、『時間と生命』(書籍工房早山)、『地球変動のポリティクス』(弘文堂)、『バイオエピステモロジー』(書籍工房早山)、『ニュートン主義の罠———バイオエピステモロジーⅡ』(書籍工房早山)、『バイオエピステモロジー序説』(書籍工房早山)など。

 これまで、関連する書籍の出版を(有)書籍工房早山にお願いしてきたが、この活動を「(有)書籍工房早山・研究事業部・思考実験」として分離し、バイオエピステモロジーに関する研究活動・研究発表・講演活動などを、ここで行うことにした。

著書紹介

  • 生気論の歴史と理論
  • 時間と生命 ポスト反生気論の時代における生物的自然について
  • バイオエピステモロジー
  • ニュートン主義の罠 バイオエピステモロジーII
  • バイオエピステモロジー序説